2018/06/11更新
Colume
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院長・深野 源太 / ふかのげんた
幸にも、事故で歯が折れたり、グラついたり、抜け落ちたりすることがあります。
その際は、もちろん、全身状態(意識は喪失していないか、気分が悪くないかなど)を確認しますが、歯科に関して言えば、速やかに受診していただくことが、回復の早さにつながります。

折れた場合は、折れた歯の破片を、抜け落ちた場合は、抜け落ちた歯をお持ちください。特に、歯が抜け落ちた場合は、できれば30分以内に、牛乳に漬けて(あるいは、口の中に入れて)お持ちください。歯根の表面についた細胞を乾燥させないという意味と、浸透圧で細胞が崩れないという目的があります。
早く受診していただく意味には、歯の表面についている細胞を殺さないための他、やはり感染もあります。雑菌にさらされる時間が長いほど、確実に菌は侵入してきます。菌の侵入が少量ならば、自己免疫で回復できるでしょうが、増えれば回復できない深刻なダメージを受けてしまいます。
| 診断名 | 状態 | 治療法 | 予後 |
|---|---|---|---|
| 歯冠破折 | 歯の頭の一部が折れる | CR、破折片の接着 | 歯髄への感染がなければ良好 |
| 歯根破折 | 歯の根っこが折れる | 経過観察、根管治療、抜歯 | 感染がなければなんとか・・・ |
| 亜脱臼 | 歯がグラグラする | 経過観察、固定 | 神経が死ぬ可能性がある |
| 脱臼 | 歯が完全に落ちる | 再植固定 | 早いと良好、遅いと不良 |
| 歯槽骨骨折 | 歯を支える骨ごと折れる | 整復固定、経過観察 | わりと良好 |
当院は、外傷歯で世界的に有名な月星光博先生(2009~2011国際外傷歯学会会長)のセミナーを受けております。また、継続して、氏の講演に参加しております。
歯冠歯根破折 Case1

左上の前歯が折れています。やや暗く見える筋の入った歯が割れている歯です。
破折片を除去しました。
かなり深い位置で折れています。
破折片です。
接着するのに、出血があると着きません。血液が介在しないように、仕方なく歯肉をめくり、止血します。
十分に止血を確認し、破折片をくっつけます。(位置がずれないようにあらかじめステントは作成してあります。)
縫合します。
無事に回復しています。かなり省略していますが、今回は受傷してからかなり時間が経っているため、神経が既に死んでおり、この処置もしています。複雑な破折のため、予後を十分に説明し、X線等でしっかり状態を確認する必要はあります。歯冠歯根破折 Case2

受傷後、数日経っていたので、神経が完全に死んでいたのは残念なところ・・・
位置を確認し、整復。ステントを作成。
破折片にべベルを付与。
もとの歯にもべベル(くっつけるスペース)付与。
きちっと戻ることを確認して、樹脂を流していきます。
樹脂(レジン)を流し終わって整形したところ。色(シェード)に注意して目立たないように仕上がっているか確認。
噛み合わせの面からも確認し、継ぎ目がきちんと修復されているかを確認する。
どうでしょうか?目立たないように仕上がっていませんか?。強度も可能な限り強めております。自分の子供たちが外傷を受けた際、差し歯にされたり、いい加減に付けられたりすると、本当にがっかりするので、できる限り綺麗に、強く、コンパクトに行うのが、われわれの使命の一つではないでしょうか。